ずっと前に見た映画のセリフで強く印象に残っているものがあり、そのセリフの前後関係が気になったのでDVDで見直してみました。映画は「バック・トゥ・ザ・フューチャー Part3」。まだ見た事の無い人のために詳細は書きませんが、1985年のアメリカの若者が、友人の老科学者の発明したタイムマシーンで過去や未来へ行ってあんなことやこんなことを起こしたり巻き込まれたりという、…詳細をお知りになりたい方はWikipediaかgoo映画あたりでお調べください。
さて、気になっていたセリフは次のようなシチュエーションで発せられていました。
1955年の古い廃坑で
1985年に生きる主人公マーティが、
1955年当時の科学者ドクと一緒に
1885年に、1985年のドクが隠した
1985年のタイムマシーンを発掘しながら(あ~ややこし)
故障した部品を仔細に見ていたドク。
ドク 「こんな小さい部品の故障が大問題につながるとは…
ふん、道理で壊れるわけだ。日本製だとさ」
マーティ「何言ってるんだよドク、日本の製品はみんな最高だよ」
ドク 「信じられん…」
このシーンのポイントは、1955年当時のアメリカでは日本製品は粗悪な安物と認識されており、それが将来、特に電子機器の分野を筆頭に日本製品は高品質の代名詞になるとは想像もできなかったという事。博識な科学者であるドクですらも例外ではなく、80年代の日本製品を知るマーティとのギャップが面白さを醸し出しています。
実際には1955年(昭和30年)まで日本の工業技術が全てに於いて未発達だったわけではなく、戦後の復興期であったことや、アメリカには"Made in Occupied Japan"のブリキのおもちゃやセルロイドの人形など、安価な製品の供給元として印象づけられていたという背景があって、日本製=安物という印象が定着していたのでしょう。
最近この映画のシーンを思い出したのは、ある時ふいに、この映画の舞台を2000年代の日本に、「日本製」を「中国製」に置き換えると、30年後の中国人たちは私たちと同じような気持ちでこのシーンを見て笑うかなと思い当たったからです。
2004年頃の中国での反日デモの後、それまで中国に対してニュートラルな立場にいた日本人たちも中国に嫌悪感を持つようになり、中国製品の品質の低さやモラルの低さをあげつらって嘲笑し、それによって溜飲を下げようとする傾向が見受けられました。
しかし日本でものづくりに携わっている者として忘れてはならない事は、
技術的な未熟さも
知的財産に対する意識の低さも
産業の拡大が引き起こす公害も
すべて日本が過去に経験してきたという事です。
国際的な批判や市民からの抗議を受けた先人の努力無くして今の日本は存在し得ません。GOOD DESIGN制度の起源もここにあります。
中国もいずれは技術レベルで日本と遜色の無いところまで来ます。
そのときに日本がどのようなモノづくりをしているか。
日本にしか出来ない発想が無い限り、
今、後ろを振り返って中国の未熟さを笑っているようではダメです。
亀を笑うウサギに成り下がってはいけません。
バック・トゥ・ザ・フューチャーに関する裏話的なものを一つ。
Part 1 が公開された後、Part 2が公開される前の話。当時私は電機メーカーのデザイン部に勤務していたのですが、その会社の海外営業部からデザイン部に対して「ある映画に我が社の製品が出るから、この製品のロゴを北米用のブランドロゴに置き換えたモックアップを作ってほしい」という依頼があったことを記憶しています。前述のマーティのセリフはこの電機メーカーが製作協力の見返りとして言わせたものかどうかは知る由もありませんが、もしかするとこれは日本企業の、アメリカ市場に対する勝利宣言だったのかなと思ったりもしました。
バック・トゥ・ザ・フューチャー、今見ても面白い映画です。
まだ見てない方はぜひ。旧作だからレンタルも安いよ。
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