20120303

「十分ではないが、必要。」というタイトルで。

先日、財団法人大阪デザインセンター様の発行誌 DESIGN LINK OSAKA 54号に寄稿させていただきました。タイトルは「十分ではないが、必要。」で、現在のプロダクトデザインにおいてもなお、造形は重要な要素であることを自分の言葉で語ったつもりです。http://www.designlink-osaka.com/12/03/02125738.html

日本のものづくりは戦後の復興期から高度成長、バブルとその崩壊、新興国の台頭や未曾有の大災害を経て現在までデザインとともにあり続けています。デザイナーたちは互いに刺激したり議論をしながらその時代ごとの最良のアウトプットをすべく努力を続けてきました(と信じています)。時代ごとに主流となるデザインの傾向も変わるもので、企業向け、或いはデザイナー向けに開かれるフォーラムやセミナーに参加してみると、これからのデザインはこうなるだろう、こうあるべきという議論や主張が聞けて非常に刺激になります。私がデザイナーとしてのキャリアをスタートさせた頃は、バブル期の首都圏にいたこともあってこういう機会が毎週のようにあり、時には有給休暇をとってまで自腹であちこちに聞きに、見に行っていました。当時は有名なデザイナーが目の前で話しているだけで気持ちが盛り上がって、そこで語られることを全て肯定的に捉えていたように思います。

最近でも時間が許す限り積極的にこういった機会を見つけて参加するようにはしているのですが、今の時代に即したデザイナーの主張や提言を聞くたびにやはり刺激を受け触発される自分がいる一方、もう一方では「でも、それは最先端の話しだよね?」と一歩離れて見ている自分がいます。

自分のデザイン事務所として独立してから15年の間、企業のデザイン部や他のデザイン会社の下請けとしての仕事をしたことはほとんどありません。中小企業さんと直接おつきあいをさせていただく中で、今でもなお自社内にデザイン部を持たず、どんなデザインにすれば自社の製品が市場に受け入れられるかというところで悩んでいる企業さんが如何に多いか、そもそもデザイナーとどうつきあえばいいのかわからないと言う経営者さんが如何に多いかということを実感しました。

「これからのデザインはどうあるべきか」を考えることは重要です。デザインはもはやかたちと色を決める「だけの」仕事ではないという意見に完全に同意します。しかし理想や展望を語るのと同じぐらいに、デザイン導入の入口部分でのサポートを我々デザイナーは忘れるべきではないと感じることが最近多く、今回寄稿した文章は敢えてそこを強調しました。